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zoom RSS 井沢元彦著「逆説の日本史」17(アイヌ民族と幕府崩壊の謎)

<<   作成日時 : 2011/04/10 21:15   >>

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この巻ではアイヌの人々の姿、松平定信の評価についての疑問、そして開国前夜におけるダイナミックな歴史、ユートピアなる江戸はどのような姿だったのかなどを主に学ばせていただきました。逆説シリーズも段々開国の時まで迫ってきましたので、読者としては歴史をさらに身近に感じますし、正直エキサイトしながらの勉強となりました。個人的には、今回の内容が一番身近に感じたと共に熱く読むことができました。

この本の感想に入る前にちょっと脱線をしたいのですが、以前、梅原猛氏の東北のエッセイ集やアイヌ文化の著書を読みました。梅原さんの著作、思想は好きで、全集を揃えたりして結構一時期ハマりましたが、地域が東北、北海道に関する著作を読んだ時には、勝手ながら小生の出身地(秋田)の記述内容がちょっと薄く、実際昔から見聞きしていた内容が全く盛り込まれていないことに肩を落とし、アイヌ文化についてもその最深部にまではまだ光を当てていないのではと感じました。本当に勝手な感想で申し訳ありませんが、秋田内陸にある地名を含めたアイヌ文化からの影響や、あのナマハゲについてなど、一読者として、また素人レベルですので学術的な裏付けがどうかなどと言うつもりはありませんが、読んでいて満足できなかった。確かに梅原史観なる「法隆寺」の怨霊思想には感動しましたし、「哲学の復興」にも心躍りました。でも、東北やアイヌに関しては、素人としてはアイヌ人の息遣いや本音が聞こえてくるような本をそういえばずっと待っていたように思います。

今回のアイヌ民族に関しての記述は、ただ単にアイヌ民族を扱うのではなく「ケガレ」や和人、アイヌと松前藩との関係、そして近代のスタンダード思想である「民族は団結すべきだ」という考えが分析を妨げることなど、多面的な記述があり良かった。さらに「文字を持たぬ民族アイヌ」、「人間だとは思っていない」、「動物には文化がない」などと、朱子学に染まった和人はレッテルを張り「同化」政策を行ったことが、アイヌ文化を破滅させたという逆説も驚きでした。

文中には「日本人は自分のやり方が正しい、と考えた。それは我々は善意でやっているのだから」と書いてある。これ読んだとき、アイヌ民族に関する記述であることもそうですが、昨年話題になった「これから正義の話をしよう」でおなじみのマイケル・サンデル氏の主著の第五章「重要なのは動機ーイマヌエル・カント」の内容を思い出しました。

カントは「ある行動が道徳的かどうかは、その行動がもたらす結果ではなく、その行動を起こす意図で決まる」という。そう「動機を見よ」とカントは言う。しかし、その動機が良くてもそれによって一民族の文化が無くなるとすれば、カントの考えは当てはまらなくなります。逆に思いっきり差別して虐げられた歴史を歩ませたほうが、民族としては苦しくとも文化を継承出来ていたかもしれない。カントは人間の尊厳を重んじた。そして社会全体の幸福を最大化する方法として正義を定義し、正義を自由と結びつけ、3つ目に道徳の観点から人々にふさわしいものを与えること、すなわち美徳に報い、美徳に促すために財を与えることを正義とみなすとした。カントについての記述は日を改めて書きますが、近代史において「同化」と「差別」は黒人問題や朝鮮半島の歴史を見ると、その評価が逆転するものと逆転しないものが混在するように今は思えてならない。

「同化」と「差別」は違うと井沢氏は言う。「同化政策」が民族独自の文化を失わせることになった。そして「差別」は、差別という理不尽なことが歴史の一時期あったとしても、その民族のアイデンティティは保たれる。とすると幸せなこととアイデンティティの共存が可能なのか、あるいはどちらか一方を捨てユダヤ人のように砂漠をさまようのか、他にも考察しなければならない事例があると思います。大いに考えさせられました。

話変わって、開国前夜の1792年のラクスマンからの日本の対応は、そう、目下の東京電力の姿に思えてならない。江戸時代でいえば、朱子学思想に染まり、目下の問題解決を避けて先送りして、今までの事故を隠してきた。これからいろいろと出てくることでしょう。これに関しては小生は憂国の気持ちでおります。ペリーの黒船来航前までの海外との接触で見せた日本の失態を、日本人は今まで学んで来なかったから、繰り返し、大組織にあってはあのような人災が起こるべくして起こしたのではないかとさえ思ってしまいます。

最後に、「ユートピアとしての江戸編」は現代の環境問題を考える上で、理想的な姿を作り出していたと感じました。がしかし、歴史がダイナミックに動き出している時に、今までの温かい安全な部屋から外に出る勇気のタイミングを逸すればどうなるかを、まざまざと感じることになりました。あるシステムが完成したときには、逆にそれを壊して次の時代に進む勇気あるシュミレーションをしていなければならないと思います。

「平和」は素晴らしいし誰だってこれが永遠に続いてほしい。また貧しい人や苦しんでいる人には手を差し伸べてやりたい。さらに何らかの形で役に立ちたいと皆さんも思っていることでしょう。今回読了して、アンダーラインを振り返りながらまた読み返すと、現在起こっていることへの最良のヒントを歴史が与えてくれているのをひしひしと感じます。






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